- 出番のなかった、ずいぶん前に使っていた30Wのgoot製はんだごてを使用して,インサートナットを正確に,垂直に圧入できるツールを製作しようと考えた
- 大きな力は加わらないので,簡単軽量なスタンドを作製し,そこにはんだごてをセットする形態とする.ある程度安定は欲しいので,ベースは鉄板を使用
- インサートナットは,PLAやPETGで製作した3Dプリンター造形物に相性がいい.インサートナットを加熱・圧入するだけで丈夫なメネジ部を作ることができる
- しかし,垂直に圧入するのをフリーハンドで行うのは極めて難しい(と思う)
- そこで一定のクオリティと再現性で圧入ができるツールを作りたかった
- 一番使用するインサートナットのサイズは M2 M3 M4 M5 なので,それらに対応させる
- 加熱した金属棒をインサートナットに差し込んで,できるだけ垂直に押し込んでいけばいいのだが,どんなに慎重に行ってもやはりフリーハンドでは限界がある.垂直に保持しながら押し込んだつもりでも傾いて入っていき,修正しようと戻すと穴が大きくなってしまう.何せ高温で溶かしながらなので,時間的余裕もない
- そこで,決してオリジナリティがあるとは言えない方法だが,はんだごてをスタンドにつけてスライドさせて圧入する方法を取った.スタンドへつけるのは3Dプリンターでホルダーを製作した.このホルダもなかなかスムーズに上下してくれず苦労した.何度も試作して最終形態に落ち着いた
- 加熱する金属棒はφ7mm真鍮丸棒を使用する.これをnano旋盤で旋削して各サイズのインサートナット専用ロッドを作製する.この用途では,卓上旋盤なんぞよりよっぽど適していると考えている.真鍮丸棒をnano旋盤で加工するのはめちゃくちゃ楽しい!
- ロッド先端の外径は,インサートナット内径よりわずかに小さくする.実際に旋削しながらインサートナットを差し込んでいいところを探る
- ロッド先端の長さが重要である.インサートナットの長さより短くならないようにする.もし短いと溶けたPLAなどがインサートナットの中に入り込んで塞いでしまうからである
- したがって,インサートナットの径,長さに応じた専用ロッドが必要となる
- Amazonに,はんだごてに装着して使用するロッドが販売されているのだが,やはり専用品は汎用品に勝るのである
- 動作を説明する動画です
- 引きばねで戻されるのが肝です
- 本記事で使用するパーツの呼称を画像のように定義した
- ほとんど造語である
- 最下層は12mmコンパネ(ドルフィンコート)を使用した.安定性確保の重さを確保するためと,マグネットを利用できるようにするために,その上に150mm × 150mm 1mm厚鉄板を貼り付けた
- こういう小物造りに便利である.ウレタン塗装なので表面は硬く撥水性は抜群.このサイズだと☆☆☆なのでホルムアルデヒドは安心できるかなと思っている
- しばらく使わないでおいたら,派手に錆が出てしまった.磨いて,CRC-556やオイルを塗布してみたが,また錆が出てしまった
- そこで,スプレー塗料で塗装したのだが,またまたトラブル発生.金属製のものを落としてしまうと容易に塗面にキズがついてしまうのだ.仕方なくシール付き透明フィルムを貼り付行けた.みっともないが,傷がつくとメンタルも傷つくので見た目はあきらめた
- 底面にはお約束のゴム足は必須である
- goot CXR-40 専用で設計.現行機種はCXR-41 なのだが,サイズは同じはず
- アタッチメントは,上下の半田ごてを把持する部分のセンターを結ぶラインが,支柱と平行になるようにFusionで設計した
- アタッチメントは15mm角のアルミパイプをガイドに上下させるが,この形態になるまで,画像の試作品以外にもいくつか作っている.なるべくアルミパイプとの接触抵抗を減少させ,かつアルミパイプとのガタがないよう試行錯誤した
- で,落ち着いたのがこの形態である.アルミパイプに挿入したばかりの時はすこしきつかったが,上下に動かしていると滑らか動く様になった
- 支柱のアルミパイプは近所のホームセンターで購入.やはり実物をみて選びたかったので,通販は避けた
切断は,nanoテーブルソーであっという間に,きれいに切断できる - 支柱固定郎はPLAで作った.パイプとの固定には当初4mmユリアネジを考えていたがフリクショナルフィットであったのでこのまま使うことにした.最初のバージョンは直方体で立ち上げていたが強度が不安になったので,台形になる幼女今日する形態にした
- ベースの一部には1mm厚の鉄板を接着した.マグネットを利用することを考えてだったが,鉄板は簡単に錆びてしまった.色々試したが,内部へ浸潤していたので塗装することにした
- アクリル系スプレーを3層吹いたが,半田ごてにロッドを付けてごにょごにょしていたら,鉄板上にロッドが落ちてひっかき傷がついてしまった.同時にメンタルも傷ついた
- 面倒なので,透明シールを貼ってごまかした
- インサートナット在入すると当然アタッチメントは下がっている.この状態からインサートナットをずらすことなくアタッチメントを上げるのは,フリーハンドでは容易では無いと考えていたので,引っ張り上げる機構を組み込むことを当初から考えていたので,支柱上方にリングをつけたパーツをM4ユリアネジで固定することにした.もちろんインサートナットを圧入してある
- ずいぶん前に電子工作用に購入したのだが,FX-600を購入したので出番喪失
- この型番は販売されなくなっている.セラミックヒーターで温度上昇が早い
- 後継機種はCXR-41 である.ほとんど同じだが,最高温度が変更になった
CXR-40:520℃ CXR-41:470℃ - こて先と交換してセットする部分を,ロッドと呼ぶことにする
- 取り外したこて先の各部分を計測して,ロッド製作の参考にした
- 製作には旋盤が必須である.このサイズを汎用旋盤で作ろうと思ったら,それなりに大変なのではないだろうか.使ったことないので,多分だが
- で,nano旋盤は反対にこのサイズのものを作らせたら最高のマシンだと思う.何せ小さな小さな工房のきゃしゃなワークベンチ上に,ちょこんとのっけた旋盤で真鍮棒がサクサク削れる快感を与えてくれるのだから
- 圧入するインサートナットに合わせてロッドを作っておくのがベストである
- ロッドの先端長さは,インサートナットの長さよりわずかに長くなるようにする.そうすると溶けたPLAなどが入り込む心配がない.短いと入り込んで固まって往生する
- 先端部の径も重要.インサートナットの内径にピッタリすぎると,入れるときと出すときに引っかかり,インサートナットが動いてしまう.緩すぎると当然まっすぐ入らない
- nano旋盤のチャックにつけて外径切削しながら,インサートナットを入れていい塩梅を探りながら調整する
- 画像で紹介したロッドは心押し台の改造を行う前のものなので,真鍮棒の真ん中に穴を開けるのも苦労した.改造後の製作が楽しみである
- 手持ちのドリルいくつかで試したみたが,内径は 4.3-4.5mm辺り,アバウトで問題ないよう
- 真鍮製のロッドは,すぐに酸化してくすんでくる.ピカールで磨いてCRC-556無香性を吹いておくとずっと金ぴか!
- 愛用の3DプリンターはQIDI TECH i-mate S である.Amazonから購入したがすでに販売されていない.2022年3月に購入したのだが,既に時代遅れか
- 最新機種と比べて,印刷速度は遅いのだが,使い勝手や安定性から気に入っている
- がしかし,購入当初から気に入らないところがあった.レベリングを行うときに使用する高さの調整で回すねじ部分なのだが,これが小さい蝶ネジなのである.小さいがゆえに回しにくく指に食い込んで痛い!
- そこで,白いPETGで印刷したツマミにM4x8mmインサートナットを圧入して使っていたが,画像の通り思い切りずれて圧入されている.これでも慎重に圧入したのだが・・・
- インサートナット圧入スタンドが完成したら,最初に製作しようと考えていたのがこのツマミである
- 結果,大成功! 動画でご覧ください
- 3Dプリンターのベッドを調整・固定するためのつまみを製作
- M4 X 8mm インサートナットを圧入
- 実際に使ってみて,かなり使えるツールであることが分かったので,パーツを3Dプリンターで作製できるようデータファイルを公開します
- 「上フック」「はんだごてアタッチメント」「支柱固定部」各パーツを公開
- 上記パーツは印刷して準備できたとして,問題になるのがはんだごてである.記事にも書いた通りCXR-41は現在もAmazonで購入可能である
- 支柱となる15mmX15mmアルミ角パイプは,ホームセンターに置いてあることが多いが,Amazonでも購入可能
- 最大の問題は,はんだごてのこて先の代わりに装着するロッドではないかと思う.私はnano旋盤で削りだしたが自作するとなるとかなりハードルが高いと思う
- そこで,代替えになるものがないかと探していたところ,AmazonにShineNow ヒートセットインサートチップという商品が販売されているのを見つけた.さすが市販品,かなり便利そうである
- 商品ページのイメージ付きレビューで,なんとヒートセットインサートチップをCXR-41に装着できたとのレビューをされている方がおられた.感謝である
- ということで,本ツールを作ってみることは可能である
- 新規公開したダウンロードセンター 記念すべき最初の公開データとなりました
こちらからダウンロードできます.あくまで,自己責任でご使用ください.すべての環境でうまくいくとは限らないし,無調整で使えるというものではありません - フィラメントのおススメは白などの明るい色のPLAである.後述するが調整がしやすい
- 3つのパーツのうち,調整が一番難しいのははんだごてアタッチメントである.その形からサポートが必須なのであるが,どの面をビルドプレート側にするかということを考慮する必要がある.なるべく角パイプが貫通する枠の内部はサポート材がつかないようにしておこないと,滑らかにパイプを動かすための調整が困難となる
- したがって,印刷方向は事実上一択である.サポート材のつき方と印刷方向を説明する画像を用意した
- はんだごてアタッチメントの調整が,本ツールの製作上の肝である.すなわち,アルミ角パイプがはんだごてアタッチメントの4つの枠内をいかに滑らかに動けるように調整するかということである.枠サイズを大きめに設計すればそれは可能であるが,がたつきも出てしまう.したがって,わずかにきつめになるように作製しておいて,やすりで微調整を行う仕様としている.やすりは単目のものが使いやすい.よく削れるし,目が詰まりにくい.また平ヤスリであるが側面にはヤスリ目がついていないことが重要.枠内の角部分がパイプと擦れることが多いのだが,格安に売られているダイヤモンドやすりでは側面でも切削できてしまうため,直角を出すのが削りすぎでうまくいかない
私が気に入って使っているのはGSIクレオスの単目ヤスリである.プラモデル用だけにPLAのやすり掛けはすごくやりやすい - アルミ角パイプを1.3mm Bの替え芯を入れたシャープペンシルで塗りつぶして置き,当たりを確認する.ちなみにこのシャープペンシルは芯が太くて,ワークに書き込んだ時に傷つけることなく気に入っている.何度も何度も貫通させてはあたりを見つけて,やすり掛け.面倒を通り越して楽しい作業となってくる.調整が必要な部分は色が付くが見易くするために,PLAは白などの明るい色だと良い.思った擦れ具合が得られるまで没頭でき,クラフター冥利に尽きるのである.その擦れ具合は,好みがあろうが,後で取り付ける引きばねで引き戻される程度にはスムーズでないといけない
- 引きばねは70mmのものをホームセンターで購入.強度はピッタリであった.これをノックピンでとめるのだが,PLAなので熱して押しこめば簡単に圧入できる.Amazonでも同じばねが入手可能である
- 支柱固定部は,角パイプを入れてねじ止めできるようにネジ穴を設けてあるが,若干きつめとなるよう設計してあるのでパイプを叩き込めば,パイプの縁がナイフのようにPLAを削りながら入っていく.そのまま抜けなくなるのでねじ止めは不要であるが,あえて消さずに残してある
- 固定用に四隅にM4皿ビス用の穴加工を行ってある.このままでは安定しないので,土台となる板に取り付けることを前提にしてある.両面テープで貼り付けても問題はないと思う.安定させるためにもある程度厚みがあって重い木材が望ましい.私は重さ確保,マグネット使用を想定して1mm厚の鉄板を貼り付けた.